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日本過てり!

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明治37年(1904)2月4日の御前会議で、日本はロシアとの国交断絶を決定した。

しか政府も軍部もこの戦争に勝てると言う自信はなかったといわれる。

御前会議の後、伊藤博文は直ちにアメリカ事情に詳しい金子堅太郎を呼び「近い将来、ルーズヴェルト大統領に講和の調停を依頼できるよう工作してもらいたい」と告げた。

戦争を始めると同時に、それを何時どうして終わらせるかを考えていたことになる。

その他、明治政府は国債を発行して戦費を外国から調達し(高橋是清)、ロシアの背後から諜報工作をして、霍乱を図ったり(明石元二郎)、ロシアの地理を綿密に調べ上げて(福島安正)約10年ほど前から準備を怠らなかったことが判っている。

つまり日本の思考は日露戦争以前では正しく働いていたと言える。

問題は日露戦争以後、全権大使であった小村寿太郎の帰国後から何故か、それまでの思考路線から次第に変わり始めた。

それは戦争に勝ったことで増長を始めた国民の感情もあるが、軍部の思い上がり、と大国主義への傾倒が主たる原因としか思えない。

何といっても、小村が帰国後、「桂・ハリマン会議」で調印済みの満州での鉄道敷設事業の撤回から、ユダヤ系であったルーズヴェルトが日本に対して不信派側に立ち、マハンをして40年後の第二次世界大戦の基礎準備「オレンジ計画」発案をせしめたところにあると信じる。

ここに外部から眺めながら日本の将来に危惧を持ち、第二次世界戦争勃発の直前にアメリカ大統領をして昭和天皇に親書を送り付けさせた人物、淺河貫一(1873~1948)がいる。

今朝(2009年7月27日)の京都新聞、「日本近代考、歩み来て、未来へ」の記事を見かけたので、日本では意図的に報道されなかった淺河貫一の足跡を少し紹介したい。

「日本の禍機」は唯一日本で刊行された淺河貫一の著書である

淺河は福島県に生まれ、日本人最初のエール大学教授(歴史学)となった。

1896年にアメリカに渡り、帰国することなく、終生彼地で学究生活を送った。

1904年に英文で「日露衝突」を出版、日本の立場と主張を世界に知らしめるべく運動したと言われている。

しかし、日本では不思議なほど彼の存在は無視され続けた。

京都新聞はその辺の事情を“淺河が官学の伝統から無縁であったこと、戦後日本がマルクス主義一辺倒になり、彼の主張と会わなくなった為”と伝えている。

彼の唯一の日本語著書「日本の禍機」は日露戦争が終わって3年後の1明治41年(1908)に出版されている。

ここで注目したいのは、淺河はその時期、既に世界の日本を見る目が如何に大きく変わってきているかを忠告の意味で祖国に書き送る為筆を染めたと思わざるを得ない。

その内容は;

「日露戦争以後の世情の変遷」(前編)、「日本国運の危機」(後編)では、①「米国の日本に関する感情の変遷」、「日、清、米の重大なる関係」、④「米国為政者の東洋に関する思想」に分けて彼地から客観的視野に立って祖国に「世界に目を向けるよう」忠告を発している。

日本政府が国民に陳謝すべきは、ワシントン駐在の大使が宣戦布告詔書伝達に時間を取りすぎて、実際の戦闘開始時刻を過ぎてもそれを送りつけられなかった大失策を犯したことにあると思う。

無駄に時間がかかった理由が「詔書の英訳」だったとすれば世界の笑いものになるのは当然。

戦雲急を告げる頃、淺河は遂に戦争の回避に動き出した。彼は国会図書館にいた知人を通して大統領に昭和天皇に“陛下、私を信じたまえ”と言う内容の親書を送るよう依頼した。(京都新聞、浅河草案は現存)

そのアメリカ大統領親書が昭和天皇に届けられたのは、真珠湾攻撃寸前の、日本時間12月8日未明。日本の艦載機が空母の甲板から飛び立とうとしている時であったらしい。

淺河の望みは裏切られて、開戦となったが、淺河はそれを知ったとき泣き崩れたと言われている。

明治天皇が1912年に崩御、病身の大正天皇の代がその後13年半続いたが、その間、日本は軍部のイニシャティヴでますます“西洋”と対峙することとなり彼らの「罠」にはまってゆく運命を辿った。その様子をつぶさに傍観していた淺河貫一の胸の内は如何なるものであったか想像に余りあるものがある。

最近“「奢る日本と」戦った男”の著者、清水美和(55)は“各国がナショナリズムを掲げて台頭する今のアジア情勢は、淺河が警告を発し始めた20世紀初頭とどこか似てきていませんか?”と述べているとか。(挿絵:真珠湾)

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