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アメリカの覚醒

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今年11月に迫った中間選挙を目前に、オバマ大統領の「新兵器」とも云うべ新手の戦略は、新語「リショアリング」(reshoring)、「バックショアリング」(backshoring)と「ニアショアリング」(nearshoring)を提唱した、ハリー・モーザー(Harry Mozer)に共鳴を示し、前世紀末に一旦、低賃金を求めて、中国やアジアの各地に出て行ったアメリカの産業を本国に呼び戻そうと云う運動である。

shoreとは岸辺のことで、従って、リショアリング(reshoring)は一度、オフショアー(offshore)したものをバックさせる意味を持たせた新語である。

これはアメリカの“覚醒”とも云うべき革命的な新発想ではないかと筆者は考える。

米企業のリショアリングを促進する団体「リショアリング・イニシャティヴ」の創立者、ハリー・モザー氏は「米製造業は復活し、米経済の回復を導いている」と強調している。

この現象の背景には中国での人件費の上昇やカントリー・リスクへの懸念が背景にある。錆びついたベルト(rusting belt)と呼ばれ、一時は見捨てられた重工業を中心としたアメリカ産業の再興をオバマ大統領が再び呼び戻す号令を下したと思われる。

米ボストン・コンサルティンググループ(BCG)が製造業106社を対象に行った調査では、「中国から製造拠点の移管を計画、もしくは、それを検討中」と回答した企業37%、その内年間売上高が100億ドル以上の大企業に限れば48%と半数近くに達している。BCGはこれらの企業のリショアリングによって米国内の企業に80万人の雇用が発生するとの試算も出しており、これに関係するサービス業なども含めると、さらに300万人の雇用創生となると予想している。

最近中国で顕著となりつつある、政治・社会リスクも看過できない現象で、その中で、特に象徴的なのが、米電子機器大手アップル社をめぐるトラブル。(商標権)

アメリカと中国間の商習慣や商道徳の顕著な違いもさることながら、手厚い政府の保護下にある中国企業と、自国産業がフェアーなグラウンド上で勝負することが至難な段階になりつつあると考えだしたとも思われる。

筆者はこのあたりに、したたかなアメリカ外交が働いていると思う原因として、米中間で4月に開催された経済フォーラムで、米ケイトー研究所のダニエル・イケンソン研究員が「中国は市場の自由化を進めているがメディアがそれを経済摩擦としてあおっている」と強調したり、別の米シンクタンクの関係者は「安全保障では譲れなくとも通商問題では決定的な摩擦を避けたいのがオバマ政権、米産業界の本音」とも云ったりしている。

米産業の「リショアリング運動」の起こりの発端と目的は、最近顕著となっている米中間の貨幣価値問題の是正の為のアメリカ式“恫喝”が考えられる。

それに加えて、商道徳にもとずく米中間の商標権やパテントの法律や習慣の問題の是正要請。

昨年に日本で発生した地殻変動や政治的混迷等の研究結果としての危険の回避や、輸送コストの削減等も重要要素である。

しかし何と云っても、既に半年後に迫ったオバマ政権の再選に向けてのプロパガンダと考えられ、これに依って、アメリカの失業問題の改善と、貿易収支の改善を達成する目的で掲げられたオアバマ大統領の切り札と思って間違いない。

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