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「竜巻博士」藤田哲也

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去る520日、米南部オクラホマ市の近郊で巨大竜巻が発生、多くの死者と甚大な損害をもたらした。

その規模は、もたらした損害規模から“EFスケール5”と判定された。

この竜巻は直径約2キロ、最大風速は90メートルに達し、スーパーセルと呼ばれる巨大積乱雲から生じたものであった。

これは高さが1213キロの高さの積乱雲から巻き起こる下降気流のことで、メキシコ湾からの湿った空気と、北からの冷たい気流が衝突して生まれるとされている。

これを引き起こす「スーパーセル」と呼ばれる規模は通常の積乱雲と違い、中心部に直径数キロ程度のメソサイクロンと云う、ゆっくりと渦を巻く強い上昇気流があり、同時に周辺で強い下降気流が冷たく思い空気を地面に叩きつける現象を指すと言われる。

兼ねてからアメリカは竜巻による被害が多いところで、特に、それは中央部の諸州に集中している。

これら竜巻がどのようにして発生するかは大雑把には解明されていたが、実際に竜巻の規模をさらに克明に数字に置き換えたのは日本人の藤田哲也博士であったことはあまり知られていない。

藤田哲也(19201998)はアメリカで「ミスター・トルネード」の別名で呼ばれる程、下降気流現象、特に竜巻、積乱雲が起こす突風現象「ダウン・バースト」の研究の権威者として有名である。藤田哲也は1948926日生家の近くの有明海で、日本では珍しい、「竜巻」を観測、それを克明に調査して発表したところ、偶々、シカゴ大のバイアース博士  (Dr. Horace Byers)の目に止まるところとなり、その後、招聘されてアメリカに渡り,気象学の研究を始めた。

藤田が初めて渡米した、1950年代の後半頃、アメリカでは毎年発生する竜巻の回数は記録されていたが、それらの規模等については克明な記録はなかった。

そこで、藤田は、当時カンサス・シティー(ミズーリ州)の気象予報センター長であったアラン・ピアソン(Allan Pearson)と提携、竜巻の発生周辺地域で起こる竜巻を記録、建物の破壊の程度などから最大風速を推定する方法を考案、Fujita Peason Tornado Scale、(通称F、Scale)発表した。これはアメリカ国立気象局で1873年から正式に採用され、現在では国際的基準として広く用いられている。

最近では藤田氏が提唱した竜巻現象のサイズに改良がなされ、改良藤田スケール(Enhanced Fujita Scale)と命名、これは、アメリカでは2007年、その数年後カナダで使用されるようになった。

藤田の偉大さは、彼が多くの竜巻を分析、その発生のメカニズムを克明に記録、推論を交えて、これを実験室で再現して見せたことであった。

1974年の3月から四月にかけてアメリカ中部で合計148個の竜巻が発生、死者348名、負傷者5484名が記録されたが、藤田博士は全米の専門家を指揮しながら、現地での写真撮影は勿論、すべての竜巻を記録、それらを「Fスケール」に置き換えて表示したことで一躍有名になった。

又、1975年に起こったイースタン・航空機のニューヨークでの墜落事故をパイロットのミスではなくて、当時、その周辺で発生していた「急激な下降気流」(ダウン・バースト)であったことを証明したことである。

この122名の死者を出した事故(19750124)では藤田氏の指摘がなかったならば恐らくはパイロットのミスとして事故処理されていたと思われるが、それが天候による被害として証明されたのであるから航空会社にとっては正に「天の助け」として知られるようになった。

前述したように、今年はアメリカでの、30年ぶりの竜巻当たり年である。わが国でも今後、地球の温暖化による異常気象で、特に関東平野に於いて、竜巻の発生が懸念されていることは事実で、「竜巻記録」から学ぶことが多くなることが予想される。

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